主な病気・害虫と駆除法
人が風邪をひくように、緑だって病気にかかります。人が毒虫に刺されるように、緑だって害虫に痛めつけられるのです。
植物も大切な家族の一員です。家族の健康を気づかうのはあたりまえですよね。正しい知識で、大切な家族の一員である花と緑を病害虫から守りましょう。
主な病気・害虫と駆除法
灰色かび病
■被害を受けやすい木
アオキ、ウメ、クチナシ、サツキ、ツツジ、バラ、ボタン
■主な症状
特に若い葉やつぼみや花弁など、やわらかい部分が被害を受けやすい病気です。初めは病気になった部分が水がにじんだようになります。その後、急速に広がって解けたように腐り、そこに灰色~灰褐色のかびがたくさん生えます。
■予防と対策
低温高湿時(4月~5月)に発生しやすく、真夏にはあまり発生しません。特に衰弱した組織や肥料のやり過ぎで軟弱に育ったものが被害を受けやすい病気です。病気は放って置くとどんどん広がるので要注意です。発病後すぐにベノビル剤、チオファネートメチル剤、キャプタン剤などを一週間おきに2~3回散布するとよいでしょう。
うどんこ病
■被害を受けやすい木
ウメ、サクラ、サルスベリ、ナンテン、バラ、ボタン、モモ
■主な症状
新芽、若い葉や茎の表面に、小麦粉をまぶしたように白いかびがたくさん生えます。被害を受けると、葉がねじれる、小さくなる、落ちるなどの症状が出ます。
■予防と対策
5月下旬~7月、9月~10月下旬に発生しやすい病気です。うどんこ病には多くの種類がありますが、特にバラのうどんこ病はポピュラーなものです。この病気は薬剤での治療が比較的簡単なので、病気発生期間中、1週間おきに2~4回程度、チオファネートメチル剤、ベノミル剤、ジネブ剤などを散布するとよいでしょう。
炭そ病
■被害を受けやすい木
アオキ、アンズ、ウメ、カキ、サザンカ、シャクナゲ、クチナシ、スモモ、ツバキ、バラ、モクセイ、モモ
■主な症状
葉、若枝、果実に暗褐色の斑点ができ、次第に大きくなります。葉は黄色くなって落ち、果実も腐って落ちてしまいます。
■予防と対策
雨の多い6月~7月上旬、9月~10月に発生しやすい病気です。病気になった部分は早めに切り取って焼却処分します。チッ素肥料をやりすぎたり、枝が込み合ってくると病気になりやすくなるので注意が必要です。発病期には月に1~2回、ジネブ剤、チオファネートメチル剤、ベノミル剤を散布します。
すす病
■被害を受けやすい木
ウメ、ケヤキ、サザンカ、サルスベリ、ツバキ、ナンテン、モチノキ、ヤナギ
■主な症状
枝や葉、幹の表面がすすをかぶったように真っ黒くなり、汚くなります。
■予防と対策
アブラムシやカイガラムシの発生物にすす病菌が繁殖して起こります。特に、虫の繁殖期の4月~10月にはひどく見られる。すす病そのものにはジネブ剤やチオファネートメチル剤の散布が有効だが、この効果は一時的なもので、徹底的な防除には先に述べた害虫の駆除が必要。
褐斑病
■被害を受けやすい木
サツキ、シャクナゲ、ツツジ、ツバキ、ボケ、ボタン
■主な症状
葉の表面に、淡褐色~暗褐色の小さな斑点が生じ、次第に大きくなっていく病気です。
■予防と対策
褐斑病の菌の種類は様々ですが、連作や植えっぱなしをすると、発病しやすい病気です。特に初夏の多湿な時期には多くなり、雨で伝染します。病気の部分は早くつみとり、発生源を減らしましょう。発生初期にジネブ剤、ベノミル剤、マンゼブ剤などを2~3回散布します。風通しと日当たりを良くすることが予防につながります。
天狗巣病
■被害を受けやすい木
アオギリ、サクラ(特にソメイヨシノ)、サツキ、ヒノキ
■主な症状
はじめに枝の一部がふくれてこぶ状になり、そこから小枝が異常に発生してほうきのようになります。この病気にかかると枝は細く、葉は小さく花は咲かなくなってしまいます。
■予防と対策
発病を見つけたらすぐに健全な枝の部分から切りとって、焼却処分をするようにしましょう。切り口には接ぎロウなどの癒着剤を塗って腐るのを防ぎます。薬剤で防除するよりも、早く見つけて切りとるほうが確実ですが、冬の間に1~2回、ジネブ剤やマンゼブ剤などを2~3回散布しておくと、まん延防止になります。
根頭がん腫病
■被害を受けやすい木
アンズ、カリン、サクラ、サザンカ、ツバキ、バラ、ボケ、ボタン、ポプラ、フジ、モモ、ヤナギ
■主な症状
幹の地ぎわや根に、表面に亀裂のあるこぶができます。このこぶは次第に大きくなり、最後には腐ります。
■予防と対策
土の中にいる細菌の一種が根の傷などから侵入して病気が発生します。この細菌は土の中に長く住みつくので、一度発病した場所に再び植えることはやめた方がよいでしょう。発病した木は見つけ次第抜きとります。その際、かぶの近くの土を植え替えましょう。一度発病すると治りにくいやっかいな病気です。
赤星病
■被害を受けやすい木
カイヅカイブキ、カイドウ、カリン、ナシ、バラ、ヒメリンゴ、ビャクシン、ボケ、リンゴ
■主な症状
葉の表面に橙黄色の斑点ができ、それが次第に大きくなった後、葉裏に星状の突起が発生します。被害葉はやがて枯れて落ちてしまいます。
■予防と対策
この菌は時期によって寄生植物をかえます。春、ナシやボケの葉で胞子を作り、冬にカイヅカイブキやビャクシンに移って越冬、再び春にナシやボケに移ります。予防にはビャクシンとカイヅカイブキを近くに植えず、病気の発生しやすい展葉初期の4月からジネブ剤やマンゼブ剤を1週間おきに2~3回散布します。
黒星病
■被害を受けやすい木
アンズ、ウメ、バラ、モモ
■主な症状
葉、若枝、果実に発生します。暗褐色の斑点ができ、葉は黄色くなってたくさん落ちるようになります。ひどくなると、花が咲かなくなります。
■予防と対策
バラの最も恐ろしい病気で、雨が続くと発生しやすい。予防には2月ごろに石灰硫黄合剤を散布します。落ちた葉は焼却し、発生源をなくします。チッ素肥料は控えめ、カリ肥料は多めに。5~6月に発病しやすいので、発病したらすぐ7~10日おきに3~4回、ベノミル剤、チオファネートメチル剤、マンゼブ剤などを散布します。
縮葉病
■被害を受けやすい木
ウメ、サクラ、スモモ、モモ
■主な症状
新葉が成長する際に赤くなって不規則に縮み、かきもちを焼いたようにふくれあがります。その後、葉全体に白い粉をふき、葉は枯れて落ちてしまいます。
■予防と対策
ひどくなると枝枯れを起こすこの病気は、新葉の成長期のみ発生し、飛び散った胞子は枝や芽に翌年まで潜伏します。予防には、冬に石灰硫黄合剤を散布し、新葉発生初期からはベノミル剤、チオファネートメチル剤、ジネブ剤などを7~10日おきに2~3回散布します。病気の葉は摘みとって焼くか、土に埋めて処理をするようにしましょう。
主な害虫
灰色かび病
■被害を受けやすい木
庭木・花木全般
■主な特徴
葉や茎から汁を吸います。そのため植物が衰弱し、葉が縮んだり、すす病などの病気が発生しやすくなったりする。
■予防と対策
アブラムシにはきわめて多くの種類があり、日本にいるものだけでも、1000種類ほどといわれています。春から初夏にかけての発生が最も多く、真夏には減少して、秋に再び増えます。一般に薬剤には弱いので、発生初期に殺虫剤を散布します。1週間おきに2~3回がめやすです。たいていの殺虫剤が有効です。
カイガラムシ
■被害を受けやすい木
庭木・花木全般
■主な症状
葉、枝、幹から汁を吸い、植物の生育に悪影響を与えます。ひどいときには枝枯れ、衰弱、枯死を起こし、すす病発生の原因にもなります。
■予防と対策
一年中発生しますが、幼虫は5~8月に発生します。この虫は殻やろう状物で覆われているため薬剤が体に浸透しにくく、目に付くようになってからの駆除は困難です。予防には冬のマシン油乳剤散布がよいでしょう。発生初期ならMEP剤、アセフェート剤を。これは幼虫発生後すぐに行いたいやり方なので、日ごろの観察が大切です。
ハマキムシ (チャハマキ、コカクモンハマキなど)
■被害を受けやすい木
庭木・花木全般
■主な特徴
口から糸を吐いて葉を2~3枚綴り、その中に幼虫が住み、葉や芽、つぼみをかじります。ひどいと新芽全てが綴られ、見苦しくなります。幼虫は緑色のイモムシです。
■予防と対策
完全に葉を巻いてからの薬剤駆除は困難です。発生期も長いので、その間5~8月にかけてMEP剤、アセフェート剤、除虫菊乳剤などを定期的に散布します。その際、被害を受けている木だけではなく、その周りの木にも散布しておきます。予防には、冬の間に綴られた葉を指で押し、中の幼虫を殺します。
オビカレハ
■被害を受けやすい木
アンズ、ウメ、サクラ、バラ、ポプラ、ミズナラ、モモ、ヤナギ
■主な特徴
葉が成長する時期に糸を吐いて天幕状の巣を作り、その中に灰青色に橙色の帯のある幼虫が群生し、夜になると葉を食い荒らします。
■予防と対策
幼虫は成長すると各枝に散らばって葉を食い荒らすので、発生初期に巣ごと捕殺します。棒の先に布切れをつけたものに油をしみこませて火をつけ、それで焼き殺すとよいでしょう。幼虫が小さいうちなら、MEP剤を1回散布します。また、冬の間に、枝に産みつけられたリング状の卵塊を見つけたら、取り除いて処分しておきましょう。
チャドクガ
■被害を受けやすい木
サザンカ、チャノキ、ツバキ
■主な特徴
成虫は黄色のガで、幼虫が葉の裏に群生して葉を食い荒らします。被害にあった葉を表から見ると黄色の斑紋がよく目立ちます。成虫・幼虫ともに毒針を持ち、皮膚に触れると発心ができてかゆくなります。
■予防と対策
年2回、5~6月と8月に発生します。できるだけ小さい幼虫のうちに葉ごととって殺すか殺虫剤を散布して駆除します。大きな毛虫になっても薬剤にはあまり強くないので、1週間おきに1~2回MEP剤、アセフェート剤、除虫菊乳剤などを散布するとよい。葉裏の卵を見つけたらつぶして予防します。
グインバムシ類
■被害を受けやすい木
アセビ、ウメ、カイドウ、コブシ、サクラ、サツキ、シャクナゲ、ツツジ、ナシ、ボケ、モクレン
■主な特徴
軍配状の羽を持つ虫が、葉裏について汁を吸います。被害にあった葉は表から見ると白い斑があるのでわかります。
■予防と対策
5~7月、9月に多発します。高温、乾燥を好み、水に弱い害虫です。予防のためには風通しをよくしたり、ハダニの場合と同様に、時々葉に強い水をかけます。たくさん発生してしまったら、1週間おきに2~3回、MEP剤などを散布します。
ベニモンアオリンガ (ツボミムシ)
■被害を受けやすい木
サツキ、シャクナゲ、ツツジ
■主な特徴
新芽やつぼみを食害被害を受けると新芽は赤く枯れ、花は開花しなくなります。
■予防と対策
5~9月にかけて年に3~4回発生を繰り返すので、こまめに駆除しないと被害が悪化します。特に花芽ができる7月以降の成虫駆除をしっかりやらないと、翌年花が咲かなくなります。発生期間中は10~14日おきにMEP剤、アセフェート剤などを散布して幼虫駆除をしましょう。
コガネムシ類
■被害を受けやすい木
ウメ、サクラ、ツツジ、ハギ、バラ、フジ、ブドウ、モモ、ヤナギ
■主な特徴
成虫は夏の夜に葉を網の目のように食い荒らします。幼虫は土中で根を食い荒らし、苗なども枯死させます。
■予防と対策
成虫は大きくて目につくので、見つけたときに根気良く捕殺します。早期に枝をゆすれば、虫が落ちてくるので、拾えば簡単です。次々と新しい虫が飛んでくるので薬剤散布はあまり効果がありません。また肥えた土地では幼虫が発生しやすいので肥料のやりすぎに注意しましょう。
ケムシ・イモムシ類
■被害を受けやすい木
庭木・花木全般
■主な特徴
チョウやガの幼虫であるケムシやイモムシは、やわらかい葉や花を食い荒らします。ひどいと、葉は葉脈だけが残され丸坊主にされてしまいます。
■予防と対策
ケムシもイモムシも目につきやすいので、見つけるたびに捕殺するのがよい方法です。イモムシは数も多くないので、むしろ薬剤散布より効果的。薬剤を使用するならば、MEP剤、アセフェート剤を1週間おきに3~4回散布します。成虫が飛び回るころに葉はに卵を産みつけるので、そのころの薬剤散布も効果が望めます。